4. ロレックス勤務で「最強役割モード」を手に入れた



【 西村綾子 STORY 4. 】

銀行を辞めた私が次に就職したのが、
日本ロレックス株式会社です。


名古屋営業所で受付を担当している時のこと。



上下真っ青なスーツを着た強面のお兄さんが、
「300万以上する時計が2日で止まるとは
どういうことだよっ!」
と明らかにお怒りの状態で乗り込んできたり、


「メンテナンス費用がなぜこんなに高いのか」
と、くってかかる方がいたり、


若いOLさんがボーナスを貯めて海外旅行で買ってきた
ロレックスがコピー品であるとわかり、
受付で泣き崩れたり…。




修理やメンテナンスの窓口でしたので、
度々こういうことが起きました。

本音を言えば怖いですし、嫌ですし、
逃げたくなるような状況もあって…正直大変でした。


けれどそんな時には、こう思うように努めたのです。



(この場にいるのは素の私ではなくて、
日本ロレックスの受付としての役割を
果たすためにいる私だ) と。



「強面のお兄さんから凄まれるのは怖い」
という素の感情は、

「お客様がこんなに怒るのは、時計を大事に思って
くれているからだ」などと”役割辞典”で変換し、

「だとしたらこのお客様に何を伝えれば落ち着いて
くださるだろう、これからもロレックスを大事に
使ってくださるためにはどうすれば…」


と、”役割モード”で考えました。


そんなふうに毎日毎日、
受付でお客様の気持ちや状態を感じ取り、
必要なことを必要なタイミングで伝えるべく
神経をとがらせ続ける中で得られたことがあります。



それは「言葉って面白い」 と気づけたことでした。



私の伝え方ひとつ、言葉の選び方ひとつで、
凄んでいた人が照れ臭そうに笑って帰って行ったり、
高いと言っていた方が納得して支払ったり、
泣いている人が落ち着きを取り戻したりする。


そんな、

「役割に基づいた言葉によるコミュニケーション」

の面白さに気づくことができたのは、
過酷だったこの職場での大きな収穫でした。




そんな中、人前で話す仕事への足掛かりとなる転機はやってきました。




















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