15. 覚醒



【 西村綾子 STORY 15. 】



情報番組のリポーターの「役割」が掴みきれず、
何が求められているのかがはっきりしなくて悶々していた頃、
もうどうしようもなくなって、ある時こんなふうに切り替えたんです。

どのような現場でも、

「それ本当かな?」
「これには何か理由があるのだろうか」

と、私が”個人”として気になることがあるわけです。

”リポーターとして”どうすればいいか、
がわからなくなっていた私は、

”私が感じた疑問” をまずは解消してみることにしました。

もう、そうするしかなかったのですね。



ところがこの苦肉の策、

「わからないので、私を軸にして考えますね」

をしだした途端、これまでのことが全て繋がっていきました。




「私」は内向的であるが故に周囲の状況や人を
観察・察知することに対して元々人よりも敏感で、

「私」は力関係の判断を間違うと自分に被害が及ぶ
経験から、片方の意見だけを聞いて鵜呑みにせず、

「私」のようなタイプの方でも答えやすい
質問の仕方をすることができるなど、

私の性格や性分と、サラリーマンをはじめとする
様々な人生経験の全てが、
情報番組で一般の方向けに情報を伝えるにおいては、
とんでもなくプラスであることに気がついたのです!!!



何者でもない私だからこそ、先入観を極力持たず、
どちらかの意見や思いにも偏らないで
フラットに物事を捉えようとした、と言いますか、

そのようにしか捉えることができなかったのですけれど、
そのことが、情報を伝える上では、とてつもなく
重要であることが、だんだんわかってきました。



なぜなら情報を伝えることは、
正解を伝えることではなくて

観ている方が自分ごととして考えたり判断する上で、
材料になる情報を届けることだからです。

(私はそう思って伝えていますが、違う意見の方もいらっしゃると思います)



それを積み重ねていくうちに、


「何者でもない私が感じる疑問は、視聴者の方の疑問でもある・・・。
番組を観てくださっている方々が、
このニュースから何を知りたいのか、

どの部分が気になるのか、その感覚を持って、
専門家に質問したり、現場で取材をする。

そしてその中から、情報を取捨選択し、
何を、どのように、どの順番で伝えれば、
初めて聞いた方が、自分ごととして聞いてくださるだろうか。

知りたいと思うことや気になっていることを、
そういうことなのね、と受け取っていただけるのか…
を考えて伝えるのがリポーターなのかもしれない」



こんな風に、私なりのリポーターの役割の定義が出来上がっていきました。
これを言葉にするならば、

『一般的な感覚を持って情報を扱い伝えるプロ』

でしょうか。




一度リポーターの役割を考えることから離れて、
自分ごととして取り組んでみたことで、
かえって役割の本質にたどり着くことができてからは
リポーターの仕事がどんどん面白くなっていきました。



どのように見せれば、どのように伝えれば、観ている方に伝わるのか。
徹底的に、「観ている側の視点に立った」
探究と試行錯誤をすることにのめり込んでいったのです。

懐かしの番組内インフォマーシャル。
本番時はヘアメイクにかける時間が取れないので、
さっと結んで終わり、のこの髪型が便利で長く続きました。




【 16 】へ続きます