16. どのように伝えれば伝わるのか? を 考え尽くす仕事



【 西村綾子 STORY 16. 】



私の考える ”徹底的な視聴者目線”


その基準は…

「私が視聴者だったら理解できるだろうか?」

でした。




そのためにまず、担当するニュースについて、
私の中で全ての疑問がなくなるまで調べました。

そして、それらの情報を取捨選択し…


スタジオでどのように見せるのか?

現物を見せたほうがいいのか?

まずは写真で全体像を見せてから、
簡略化した図で説明したほうがいいのか?

どこまでの情報を文字で出しておいて、
どのタイミングでテイク(画面を切替え)するのか?

などなど、
その見せ方や伝え方を研究し尽くしました。



もちろん、
ディレクターさんや作家さんも一緒に作ってくださるのですけれど、
実際にカメラの前でプレゼンするのは私です。

伝える私が伝えやすいように準備することは、
伝わるプレゼンにする上でとっても大事だからです。



これはテレビにかかわらず、どのようなプレゼンや資料も同じです。

説明する人が、説明したいことを、
説明しやすい情報や資料になっているかどうかは、
プレゼンの質に大きく影響します。

プレゼンは準備が9割と言ってもいいでしょう。




『国内最年少の生体肺区域移植(世界初)のニュース』

を担当した時のことです。



お母さんの肺の一部を分割してお子さんに移植する、
という説明をするために、肺のイラストを準備をしていました。

でもそれだと、肺のどの部分を移植するのかはよく解るものの、
この移植がいかに大変な手術であったかが伝わりにくいことが気になりました。

イラストでは、移植する肺の塊が1つのブロックのように見えるからです。



私は、患者さんご家族にも、執刀医にも取材して、
とてつもなく難易度の高い移植であったことを
お聞きしていましたので、

そのことを番組を観ている方にも感じられるように伝えたいと考えていました。
何をどう見せたら、それが伝わるだろうか…。



いただいた資料を見直す中で、
肺の中を張り巡らしている血管だけのイラストがあるのを見つけました。

幸い、その資料内のイラストは放送の使用許可をいただいていましたので、
本番直前にこの画像をプレゼンに入れ込んで説明をしました。



「このように肺には、複雑に絡み合う沢山の動脈と静脈があり、
その全てを機能するように、お子さんの血管とつなぎ合わせなければなりません」


これなら視覚的に大変さが伝えられるのではないかと考えました。



放送後、お子さんのご家族から、

「スタジオで説明していた肺の血管のイラストを見て、
改めて難しい移植を成功させてくださったんだとわかりました」

と、ご感想をいただきました。

伝えることを諦めなくてよかったと、
ほっと胸をなでおろしたのを今でも覚えています。




⬆️当時の取材ノートより。血管のイラストは左上です。
下のブロック状のものだけで説明するのではなくて、
その内側には複雑に血管が入り組んでいることを表したかったのです。
かなり細かく書き込みしていますね^^;
取材ノートを見るとそれぞれの取材やプレゼンを鮮明に思い出します。
これは2014年のニュース。

この頃はまだハーフアップ(髪型)です。




【 17 】へ続きます